設計初心者必見!溶接の指示の仕方、脚長やのど厚についても解説

投稿日:2022年09月07日

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構造設計に携わる設計者にとって、図面に溶接を指示する機会は多いのではないでしょうか。特に図面を描き始める機械設計の初心者は、溶接記号の指示に悩むことが少なくないと思います。

本記事では、これから溶接をする製品の図面を描こうとしている設計初心者が、おさえておくべき溶接の指示の仕方について解説します。

溶接がわからない初心者が図面でどのように指示すると良いのか?

溶接記号の種類は母材の形状や溶接の方法に応じて指示が異なります。
詳細はJISZ3021で規格化されていますので、これから溶接の図面を描こうとしている方はまずこちらのJISを見ることをお勧めします。

溶接指示の一例を紹介します。

例えば下の図のように、円筒と円盤の接触部をすみ肉溶接で接続する場合を想定します。
どのような溶接を指示したらよいのでしょうか?

図1.溶接する場所

溶接指示は溶接部の形状によって異なります。

今回は代表例として下の図(図2)に5つ紹介します。図1に記載したような形状のままであれば①のような表現になりますが、円筒側に面取りの加工を施した場合は②のように開先形状を指定した表現になります。

その他円筒や円盤の形状によって③~⑤の指示があります。

図2.溶接指示の例(1)

下の図(図3)は、溶接する円周上のどの領域を溶接するのかを記載した例です。

製品に求める機能・性能によって円周上のすべてを溶接する場合と、部分的に溶接する場合があります。例えば、液体を入れる容器として使いたい場合は全周溶接をして溶接個所から漏れないようにします。

密閉性や強度をあまり気にせず、部材同士が離れなければ良い場合は点付け溶接を数か所入れる場合もあります。

図3.溶接指示の例(2)

このように、溶接の指示は母材の形状や製品の目的に応じてさまざまです。溶接がわからない初心者がこれらを使い分けるのは困難なのではないでしょうか。

もし類似製品の図面があればその図面の溶接指示を参考にするのも良いでしょう。また、強度計算や耐圧計算などの設計資料があれば密閉性や強度を確認した上で、上司や先輩、製作者と相談しながら、溶接指示を決めていくと良いでしょう。

脚長とのど厚についての解説

最も一般的に使われるすみ肉溶接には「脚長」「のど厚」という大きさの指標があります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

図4.脚長とのど厚

図4の右側に示す通り、脚長の長さは数字で指定することができます。長さを指定しない場合は、製作者の判断で長さが決められます。その場合、脚長の長さは板厚の7割が目安になります。

図面には詳細を記載せず、製作者が決めるケース

このような時、下図(図5)の通り指示する方法もあります。溶接記号の注記欄に「○○溶接のこと。溶接長さは一任する」と記載するパターンです。

製作者が溶接長さを決められるので、溶接による歪みを抑えながら溶接する長さを調整することができるなど、製作者としてもありがたい面があるでしょう。

図5.溶接位置や長さを一任する例(1)

ただし、製作者にとってはあいまいな指示にも受け取れられる場合もあります。事前に製作者と相談の上、一任するような指示でも良いか確認しましょう。

また、溶接の可否がわからない場合に溶接位置を一任する例があります。

溶接する製品の形状によっては、溶接できない場所が存在します。製作者でないとわからない場合がありますので、例えば下図(図6)を出図して初めて製作者から「内側から溶接するのはできない」と言われることもあります。

外側の溶接でも問題なければ、外側に指示するか、注記に「溶接する向きは任意とする」と記載してもいいでしょう。

但し、ロット毎に溶接する場所が異なると、同じ図面の部品を複数個納品したときに、お客様からのクレームの元になる可能性がありますので、製作者がどの向きに溶接するか決めた段階で通常の溶接記号に変えたほうが無難でしょう。

図6.溶接位置や長さを一任する例(2)

溶接線長さはどのようにして決めるのか

密閉性を確保したい場合は接続箇所の全てを溶接すればいいのですが、特に全ての箇所を溶接する必要がない場合は、溶接長さをどの程度にすればよいか悩むと思います。

例えば、ある構造体に板金を溶接して補強したい場合では、どの程度の溶接長さを何か所溶接するのか、といった感じです。

振動対策のための補強であれば、振動が規定値以下であればそれほど溶接長さを確保する必要がない場合があります。

溶接長さを長くしたときのメリットとデメリットを整理すると以下の通りです。

メリット

  • 強度が確保できる
  • 剛性が上がるので、振動対策になる

デメリット

  • 溶接作業者の負担になる
  • コスト増になる
  • 製品が歪みやすくなる

溶接長さを長くするデメリットとしては歪の発生が一番問題ではないでしょうか。

歪みは溶接部の加熱と収縮によって変形します。変形の種類は、横収縮、縦収縮、縦曲がり、横曲がりなどが挙げられます。

歪みの対策としては固定治具を使う、またはあらかじめ逆に変形させた状態で溶接を行う、仮付けする、などが挙げられます。

特に溶接後の変形を気にする場合は、図面枠内の注記に「溶接後の変形なきこと」と指示する場合もあります。

熟練した溶接工は感覚的に溶接の量によってどの程度母材が変形するか知っています。溶接長さを決めるときは製作者の意見を聞いてみましょう。

まとめ

溶接を知らない初心者がどのように溶接の指示をしたらよいか、について紹介しました。
これから溶接の図面を描く方は以下のことをおさえておきましょう。

  • 溶接指示の種類は母材の形状によって異なる。
  • すみ肉溶接には脚長とのど厚がある
  • 製作者に一任できる図面の指示があるが、あくまでも最終形状を決めるまでの途中経過の図面
  • 溶接長さは溶接歪みと強度を気にする

溶接指示は製作者との細やかなコミュニケーションによって決めていくことがありますので、不明な点があれば製作者、または社内の関係者に確認しながら溶接の指示を決めていきましょう。

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