寒冷地での機械設計には凍結対策が必須

投稿日:2022年05月09日

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凍結で機械が破壊される?

冬の寒い時期になると、水が入った配管や容器が割れてしまうというトラブルが起きてしまうのを御存じでしょうか?

割れる原因は、配管や容器の内部に溜まった水が、氷になる際の堆積膨張により内部の圧力が上昇し、耐えれらなくなった為に起きてしまいます。

この現象は、暖かい地域ではあまり意識することはないかもしれませんが、寒冷地の屋外に設置する機器を設計する際は、特に注意が必要です。

さらに、凍結が起きると別の問題も生じてしまうので厄介です。その為、凍結しても問題ないという設計をすべきか、凍結しないように設計するかを適切に判断しなければいけません。

凍結によるトラブル例(割れる以外のトラブル)

  1. 凍結による装置内部の錆が剥がれ落ち、その錆による2次被害
  2. 凍結が繰り返し起きることで、装置への繰り返し応力が負荷し、装置材料の強度低下が起きる
  3. 水が解凍される時に、残っている氷の塊を同伴してしまい機械損傷を与えてしまう。

水が氷になるときの圧力は想像以上に大きい

一般的には、個体になる(凝固)と体積が減りますが、水は氷になるときに、密度が下がり体積が9%膨張します。

これは、水のみの特性で、水の温度が4℃の時が一番密度が大きい(体積が小さい状態)というちょっと変わった性質がある為です。

水の状態で満水状態になっている配管などは、氷になる為に体積膨張したくても逃げ場が無く、内圧がどんどん上昇します。

そのまま逃げ場のない状態が続く場合、氷になろうとする圧力は、氷点下-1℃になると20MPa以上になり、さらに-22.3℃まで温度が下がると、なんと209MPaにまで圧力上昇が起きます。これは水の状態線図で見るとわかるかと思います。

水の状態線図

引用元:水の性質 – Wikiwand

このような圧力が装置に加わると、延性金属であれば降伏点を超えた変形で済みます(済まないかもしれません)が、鋳鉄などの脆い材質の場合は、簡単に割れてしまいます。

機械設計者としては、凍結による装置へのダメージは必ず避けなければいけません。

凍結対策は設計と操作法の2点で対策をとるとよい

ではどのように凍結対策をとるのでしょうか。

凍結対策は、装置の機能で全てカバー出来ればいいのですが、氷点下にならない日(凍結しない条件)では不要な機能となってしまいます。その為、ある程度は運用法による対策と併せて凍結対策をとるのが一般的であると言えます。

ここで、一般的な凍結対策はどのように行なわれているかについて考えていきます。凍結対策を大別すると、

凍結しても問題がない状態にする対策と絶対に凍結しないようにする対策の2通りがあります。

凍結しても問題がないようにする設計の具体例をあげていきます。

凍結しても問題がない状態にする対策

具体例1:水が溜まる箇所に圧逃し弁(レリーフ弁)を付けておく方法

水が氷になろうと体積が膨張する際に、その膨張分を圧逃し弁で系外に排出する方法です。

水が溜まる箇所が少ない場合は、簡単に対策が取れます。

但し、圧逃し弁の内部も凍結する為、氷と水の状態を繰り返す場合は、圧逃し弁が機能しない可能性もある為注意が必要です。

引用元:ヨシタケ製 AL-150シリーズ(下向き:水入口、横向き:水出口)

具体例2:体積の膨張分のガス溜まりやダンパーを設けておく方法

氷になるときの体積膨張分を吸収できる空間を、あらかじめ設けておくという方法です。系外に水を排出する必要がなく、排出先の凍結を考慮する必要がないというメリットがあります。

しかし、水の体積が大きい場合は、その膨張分を確保するための空間も大きくなる為、そのダンパー自体も大型になってしまいます。

凍結しないようにする対策

具体例1:容器や配管内の水を使用していないときは抜くこと

水は使用していない(流れがない)時に凍結する為、水を使用するとき以外は、水をなくしてしまえばいいということです。最もシンプルで確実だといえます。

屋外にある不凍水抜き栓や不凍水抜き柱(屋外で見かける地面から飛び出ている蛇口)は、地中にある不凍層に水を排出することで、管内の凍結による破損を防いでいます。

すべての装置で、未使用時に水を自動で排出出来るように設計出来ればいいのですが、装置が複雑化してしまうことが多い為、実際は使用者に水抜操作(弁操作)をお願いする(操作マニュアルで依頼する)ことになるかもしれません。

引用元:株式会社竹村製作所製 不凍水栓柱D-Xキューブ

引用元:不凍水栓柱の使い方(不凍水栓柱D-Xキューブ施工説明書より)

表.不凍深度の目安(凍らない地表面からの深さ)

地域名 不凍深度
北海道(北見) 130cm~
北海道(札幌) 90cm~
青森 60cm~
仙台 20cm~

具体例2:加温や保温で凍結を防ぐ方法

冬の寒い時期のみ電気ヒーターなどで加温したり、保温材を周囲に巻くなどして外気が氷点下になっても容器内(配管内)が凍結しないようにする方法です。

一般般住宅等の水道管などは、電気ヒーターで加温するのが一般的かもしれません。電源が周囲になければ使用できませんが、水抜きをする手間や抜き忘れを考えると、使用者には優しい設計と言えます。

一方で、加温をせずに保温材を巻きつけているだけで凍結防止対策を行う場合は注意が必要です。

保温材の断熱効果はある程度見込めますが、保温材に水分がしみ込むと効果がほとんどなくなってしまうため、保温材が雨水や霜で濡れない様に、外装の防水処置をしっかりと行う必要があります。

一般住宅(ビル)の給水栓周りの保温材
屋内にある為、防水は不要である

まとめ

水が凍結すると、約9%の体積膨張が起きます。容器が満水状態で、その膨張を阻害すると内圧が甚大になり、容器の破壊につながります。

通常の凍結対策は、水が氷にならないように加温したり、水抜きを行うことで対策を行うことが多いです。

しかし、なるべく安価で且つ操作不要で保護したいという場合は、レリーフ弁やダンパーを設ける方法を検討してみてください。

寒冷地で水を使用する装置は、凍結対策を怠らないようにしておきましょう。