【これだけは知っておきたい】めっきの種類や特徴、用途別の選定法

投稿日:2021年11月12日

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「使用頻度の高いめっきの種類を知りたい

「それぞれのめっきの特徴を理解して、選定できるようになりたい

設計初心者の方で、このように考えている方もいるのではないでしょうか。

根拠を持ってめっきを選定できるようになりたいと思っても、種類が多すぎて何から学べばいいかわからないですよね。

私も設計業務に携わったばかりのころは、同じ悩みを抱えていました。
しかしめっきを選定するために、多くの種類を把握しておく必要はありません。

なぜなら、設計でよく使うめっきの種類は限られているからです。

本記事では、
「設計者ならこれだけは知っておいた方がいい」というめっきの種類を紹介します。

まずは今回紹介するめっきのみ押さえておけば十分です。

また、それぞれのめっきの選定法が一目でわかるフローチャートも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1. 鉄鋼材料へのめっきの種類と特徴

まず、鉄鋼材料へよく使うめっきについて解説します。

1-1. 黒染めの特徴

出典: 有限会社 斎藤パーカー工業 黒染め(四三酸化鉄被膜)

黒染めとは、アルカリ性の水溶液に部品を浸し、表面に黒色の酸化皮膜を形成する処理のことです。

黒染めは、耐食性を高めてさびにくくすること、装飾性を上げて見た目を美しくするのが目的です。

黒染めには以下の特徴があります。

  • 他のめっき処理に比べて安価
  • 膜厚が1μmと薄いため、高精度部品へのめっきに適している
  • 美しい黒光沢で見た目に優れる
  • 膜厚が薄いため、他のめっき処理に比べて耐食性が劣る

1-2. ユニクロめっきの特徴

ユニクロめっきとは、亜鉛めっき後にクロメート皮膜を付ける処理のことで、光沢クロメートとも呼ばれます。

ユニクロめっきは、黒染めと同様に耐食性や装飾性を向上させるのが目的です。

ユニクロめっきの特徴は以下の通り。

  • 比較的安価のため、鉄鋼材料へのめっきとして広く使われている
  • うっすらと青みのある銀色光沢で、装飾性に優れる
  • 膜厚のコントロールが難しいため、精度が必要な部品には適さない

【ユニクロめっきを利用する際の注意点】

ユニクロめっきを利用する場合、クロメート皮膜に含まれる六価クロムが「RoHS指令」の規制対象であることに注意してください。
「RoHS指令」とは、有害物質の使用を制限するEUの法律のことです。

したがって、EUではユニクロめっきを利用できません。またEU以外の地域でも、EU内へ製品を輸出する場合など注意が必要です。

EU内でユニクロめっきを利用したいなら、代わりに三価ホワイトを使いましょう。

三価ホワイトなら「RoHS指令」の規制対象にはなりません。
見た目の良さはすこし劣りますが、ユニクロめっきに近い銀色で、同等の耐食性を備えています。

1-3. 無電解ニッケルめっきの特徴

出典: 株式会社コダマ 無電解ニッケルメッキ

無電解ニッケルめっきとは、電気を使わず化学反応によってニッケル膜を生じさせる処理です。主な特徴は以下の通り。

  • 1μm単位で膜厚を指定できるため、高精度部品に適する
    (常用の膜厚は3~10μm)
  • 素地材料の形状が複雑でも、均一な膜厚に仕上がる
  • めっき液が高価なためコストがかかる

1-4. 硬質クロムめっきの特徴

硬質クロムめっきは、非常に硬い金属膜を得られるめっきです。

鉄鋼材料に耐摩耗性を与えたい場合、硬質クロムめっきを使用するのが一般的です。主な特徴は以下の通り。

  • 耐摩耗性が非常に高い
    (摩耗の恐れがある摺動部品などに有効)
  • 耐食性に優れる
  • 他のめっきに比べてコストが高い

まためっき膜に六価クロムが含まれないため、RoHS指令の対象外です。

ただし、めっき処理の過程では六価クロムが使用されます。
そのため、複雑な形状の部品にめっき処理を行った場合、六価クロムが残る可能性があります。

EU内での使用が想定されるなら、めっき業者の方へ事前に相談しておきましょう。
そうすれば、めっき処理後にしっかりと洗浄を行ってくれるはずです。

2. アルミ材料へのめっきの種類と特徴

次にアルミ材料へのめっきについて解説します。

2-1. アルマイトの特徴

出典: 千代田交易株式会社 カラーアルマイト

アルマイトとは、アルミ材料の表面に酸化被膜を作る処理のことです。

主な特徴は以下の通り。

  • 耐食性を上げられる
  • さまざまな着色が可能なので装飾性に優れる

鉄鋼材料に比べると、アルミ材料へのめっき処理はあまり行われません。
アルミ材料は、素地の状態でもある程度の耐食性を備えているためです。

しかしさびやすい環境だったり、手で触る機会が多かったりする場合は、アルマイト処理により耐食性を上げるのがおすすめです。

2-2. 硬質アルマイトの特徴

出典: 日本信管株式会社 硬質アルマイト処理

硬質アルマイトは、通常のアルマイト処理より厚い酸化被膜を形成します。

特徴は以下の通り。

  • 材料を硬くして耐摩耗性を上げられる
  • アルマイトのような、さまざまな着色は難しい

アルミ材料は軽量で加工性に優れるなど、優秀な金属材料です。
しかし柔らかい材料のため、簡単に傷ついたり摩耗したりといった欠点があります。

そのような欠点を補いたい場合に、硬質アルマイト処理を行うといいでしょう。

3.【用途別】めっきの選定法

ここでは、設計時におけるめっきの選定法を紹介します。

3-1. 鉄鋼材料へのめっきの選定法

まず鉄鋼材料へのめっきの選定法を以下に示します。
ポイントは、めっきを施す部品に耐摩耗性や精度が必要かどうかを考えることです。

鉄鋼材料へのめっきの選定法

3-2. アルミ材料へのめっきの選定法

次にアルミ材料へのめっきの選定法を以下に示します。

アルミ材料にはもともと耐食性が備わっています。
したがって基本的には、コストを抑えるためにめっきを行わないようにしましょう。

さびやすい環境、または耐摩耗性が必要な場合にめっきを検討してください。

アルミ材料へのめっきの選定法

まとめ

今回は、設計者なら知っておきたいめっきの種類を紹介しました。以下にまとめます。

【鉄鋼材料へのめっき】
・黒染め
・ユニクロめっき
・無電解ニッケルめっき
・硬質クロムめっき

【アルミ材料へのめっき】
・アルマイト
・硬質アルマイト

鉄鋼材料へのめっき処理を行う場合、精度や耐摩耗性が必要な部品かどうかを検討しましょう。

またアルミ材料へのめっきで考えることは、耐食性や耐摩耗性が必要かどうかです。必要でなければめっき処理は不要です。

今回紹介したポイントを押さえれば、妥当性のあるめっきの選定が可能になるはずです。ぜひ参考にしてみてください。