防錆には塗装とめっきのどっちを選ぶ? 特徴や使い分けを解説!

投稿日:2021年12月16日

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「塗装とめっきの違いって何だろう?」
「防錆処理をしたいけど塗装とめっきのどっちを選べばいい?」

今回のコラムでは、このような疑問に答えていきます。

鉄鋼材料はステンレスなどを除いて錆びやすいため、
防錆のために塗装やめっきといった表面処理を施す必要があります。

しかし、設計時にどちらの表面処理が適しているか、
判断するのに迷うこともあると思います。

そこで本コラムでは、
塗装とめっきの特徴(メリット・デメリット)や、
それぞれの使い分けについて解説します。

このコラムを読めば、
状況に合った防錆処理の選定ができるようになるでしょう。
ぜひ参考にしてください。

1. 塗装の特徴

塗装とは、材料の表面に塗料を塗る表面処理法のことです。

塗料は樹脂系の材料などから成り、
塗料による被膜で材料を覆うことで、
耐食性や装飾性を高められます。

塗装の方法としては、
ハケを使った手塗りやスプレーガンによる吹き付けなどがあります。

めっきと比べた場合の塗装の特徴(メリット・デメリット)は、
以下の表の通りです。

塗装のメリット 塗装のデメリット
〇現地でも塗装できる
(塗装は特別な設備がなくても行えるため)
(塗装が剥がれたので補修したい場合でも、手軽に行うことが可能)
 
〇再補修するのが簡単
(塗膜が一部だけ剥がれてしまった場合でも、その部分だけ塗り直せばいいため)
 
〇めっきに比べてコストが安い
(塗料はめっき液よりも安価であり、加工工程も少ないため)
 
〇部品のサイズに関係なく表面処理を施せる
(めっきの場合、めっき槽のサイズに制限されるため)
(大きな部品だとめっきを施せないこともある)
 
〇さまざまな着色が可能
(塗料に着色顔料を混ぜることで、自由に色を付けられるため)
×膜厚にばらつきがありムラが生じる
(塗装はハケなどを用いて手作業で行うことが多いため)
 
×部品の構造が複雑だと塗装が難しい
(ムラなく塗るのが難しく、時間もかかるため。また塗り忘れなども起こりやすい)
 
×めっき膜に比べて塗膜は剥がれやすい
(母材と強固に結合しているめっき膜と異なり、塗膜は母材の上にのっているだけのため)

2. めっきの特徴

めっきとは、材料をめっき槽に浸して、
表面に金属の被膜を形成する処理のことです。

塗装と同様に、
材料の耐食性や装飾性を高めるのが主な目的です。

塗装と比べた場合のめっきの特徴(メリット・デメリット)を、
以下の表に示します。

めっきのメリット めっきのデメリット
〇膜厚が均一で精度に優れる
(めっきは膜厚のコントロールがしやすいため)
 
〇構造が複雑な部品でも処理が簡単
(めっき槽に浸せば部品の内面なども処理できるため)
(※ただし無電解めっきで処理する場合に限る。電気めっきだと均一な被膜を形成するのが難しいため)
 
〇塗料に比べてめっき膜は剥がれにくい
(めっきは母材と金属結合しているため)
×現地でのめっきは難しい
(めっき処理をする設備が必要なため)
 
×再補修するのに手間がかかる
(塗装と異なりめっきが一部だけ剥がれてしまった場合、その部分だけめっきしたり、その上から再めっきしたりすることはできないため)
(再めっきするには、全てのめっき膜を1度剥がす必要がある)
 
×一般に塗装に比べてコストがかかる
(※ただしめっきする部品の数が多い場合は、塗装よりもコストが安くなる。多くの部品をめっき槽に浸せば、まとめて処理できるため)
 
×部品の大きさによっては、めっきできないこともある
(めっき槽のサイズによって、寸法が制限されるため)
 
×塗装のようにさまざまな着色は不可能
(めっきは金属の色になるためバリエーションが少ない)

3. 塗装とめっきの使い分け

ここでは、塗装とめっきのメリット・デメリットを踏まえた使い分けを紹介します。

塗装が適した部品・条件 めっきが適した部品・条件
・精度が不要な部品
(フレームやカバーといった製缶・板金部品など)
(塗装はめっきに比べて大型の部品に施すことが多い)
 
・持ち帰るのが難しい部品
(搬送・据付が困難な設備や、取り外しできない部品など)
(接触によって被膜が剥がれてしまった場合でも、塗装なら現地で補修できる)
 
・部品数が少ない場合・めっき槽に入らないくらい大きな部品
 
・多彩な色を選びたい場合
(クライアントから色を指定された場合も柔軟に対応可能)
・精度が必要な部品
(小型の精密部品など)
(めっきは塗装に比べて小型の部品に施すことが多い)
 
・部品数が多い場合
(目安として部品数が10個以上くらいなら、めっきのほうが安価になることも)
 
・構造が複雑な部品
(凹凸が多い部品や、パイプ内面などもめっきしたい場合)
(※無電解ニッケルめっきなど、電気を使わないめっきに限る)

まとめ

今回は塗装とめっきの特徴や使い分けについて解説しました。
それぞれの表面処理法の使い分けを、もう1度おさらいします。

「精度が必要な部品」や「構造が複雑な部品」への
防錆処理にはめっきが適しています。

構造が複雑な部品へのめっきは、無電解ニッケルめっきを選んでください。

また、一般に塗装のほうがめっきよりも安価ですが、
「部品数が多い場合」はめっきのほうが安くなります。

上記3つ以外の条件では、基本的に塗装を選ぶといいでしょう。

今回紹介した内容が、塗装とめっきのどちらを選ぶか考えるための、
ご参考になりましたら幸いです。