エンプラ(エンジニアリングプラスチック)とは?特性や種類を紹介

投稿日:2022年04月14日

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エンプラ(エンジニアリングプラスチック)は金属製品などの代替として、工業用に作られたプラスチックです。

総じて耐熱性が高く、機械的強度に優れる特徴がありますが、エンプラの中でも種類ごとに特徴は変わってきます。

そこで今回は、エンプラの種類とそれぞれの特徴を紹介します

エンプラとは?

エンプラは「エンジニアリングプラスチック」の略で、プラスチックの一種です。

プラスチックは造形性がよく、安価で簡単に大量生産できるのが特徴ですが、耐熱性や機械的強度に劣ることから、特に工業用での利用範囲には限界がありました。

そこで、より劣悪な環境でも使えるプラスチックの需要が高まったことにより、新しいプラスチックの研究が行われ、1960年代に登場したのがエンプラです。

エンプラには明確な基準はありませんが、総じて高い機械的強度と100℃以上の耐熱性を備えており、金属の代替として使うことで大幅な軽量化や低コスト化が実現できるようになりました。

また現在は、さらなる過酷な条件でも使えるプラスチックとして、150℃以上の環境で使える特殊エンプラ(スーパーエンプラ)も開発されています。

この特殊エンプラと区別しやすくするため、一般的なエンプラは「汎用エンプラ」と呼ばれています。

主なエンプラの種類


それでは、汎用エンプラ、特殊エンプラの主な種類と特徴について解説します。

汎用エンプラ

汎用エンプラは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレートの5種類が特に有名です。

これらの「五大汎用エンプラ」について紹介します。

ポリアミド(PA)

ポリアミドは、モノマーが多数結合したポリマー樹脂のことです。

大別してナイロンとアラミドに分類されますが、基本的にはどちらかの名前で呼ばれるためポリアミド自体は有名ではありません。

染色のしやすさが他のエンプラにない特徴であり、合成繊維として衣類に使われることが多いですが、機械的強度や耐摩耗性の高さ、加工性の良さなどから、自動車部品などにも多く用いられています。

ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネートは、透明度の高い非晶性の熱可塑性樹脂です。

寸法特性が良く、強じん性、耐衝撃性や耐久性に優れ、紫外線にも強いことから屋外での使用に適しています。

特に透明度の高さがエンプラとしては珍しく、車のヘッドランプやレンズ、航空機の窓などに使われるほか、電気絶縁性にも優れていることから、CDや光ファイバー、腕時計などにも多用されています。

一方、耐薬品性は比較的低く、有機溶剤にも弱いので、産業機器用としては使いにくいでしょう。

ポリアセタール(POM)

ポリアセタールは1960年頃にデュポン社によって開発された、結晶性の熱可塑性樹脂です。

機械的強度、耐摩耗性、摺動性、電気絶縁性に優れ、バランスのいい特性を持つこと、そしてコストも安価なことから幅広い用途で用いられています。

特に、自己潤滑性の高さによる耐摩耗性の高さは顕著であり、軸受ベアリングやギアなどの摺動部品に対する人気は高いです

他にも、有機溶剤による抵抗力が強いという特徴もありますが、耐候性や耐火性は非常に低いため、屋外などの環境には使用できません。

変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)

ポリフェニレンエーテルを主成分として、ポリスチレンなどの樹脂と混合させて作るエンプラです。

エンプラの中でも重量が軽く、電気絶縁性が非常に良いのが特徴で、機械的な性質もバランスが良いです

着色が容易という特徴もあり、電子機器や自動車の外装品などによく使われます。

酸やアルカリへの耐性もありますが、有機溶剤には弱く、耐候性や耐摩耗性も低いので注意しましょう。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)

ポリブチレンテレフタレートは、表面光沢のある白色をした、結晶性の熱可塑性樹脂であるポリエステルの一種です。

機械的強度や耐久性、耐候性など、全体的に安定した性能を持つことから、エンプラの中でも需要の多い素材です。

また、ガラス繊維を入れることで非常に強じんなプラスチックとなるのが特徴で、自動車の軽量化素材や電気電子向けの素材として人気があります

耐薬品性については、強アルカリや熱湯への耐性はありませんが、それ以外には安定した耐性を示します。

特殊エンプラ

続いて、特殊エンプラの代表的な種類について解説します。

液晶ポリマー(LCP)

液晶ポリマーは、溶融状態で結晶性を持つ、芳香族ポリエステルの総称です。

成形性の良さが特徴で、特に寸法精度が非常に優れることから、電気電子機器用の超精密部品として需要が高まっています。

耐熱性や難燃性が高く機械的強度も強いなど、特殊エンプラとして十分な性能を持っていますが、耐衝撃性や耐摩耗性は低い傾向にあります。

ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)

PTFEは、テフロンという名称で非常に多くの製品に使われている白色のエンプラです。

フッ素樹脂の中で最も古い1946年に開発された樹脂であり、耐熱性、耐薬品性が非常に優れています。

そのため、フライパンの焦げ付き防止に使われるほか、他の樹脂や金属では耐えられない薬品を扱う場面でも多用されています。

また、非常に摩擦が少なく、耐摩耗性が圧倒的に優れているほか、耐寒性、非粘着性、滑り性、絶縁性、耐候性が総じて高いのも他にない特徴です。

成形加工が難しく、コストが非常に高価なのがデメリットですが、その分の価値はあると言えるでしょう。

ポリエーテルイミド(PEI)

ポリエーテルイミドは、透明性のある琥珀色をしたエンプラです。

特殊エンプラの中では流動性が高く、加工が簡単なのが特徴で、射出成型や3Dプリンターでの成形も行われています。

耐熱温度は170℃程度で、難燃性や機械的強度、耐候性などにも優れているほか、高圧蒸気や放射線への耐性もあるため、医療や食品用途としても使われます。

非晶性樹脂ながらも耐薬品性は高いですが、有機溶剤に弱く、耐摩耗性も低いのが短所です。

ポリフェニレンスルファイド(PPS)

ポリフェニレンスルファイドは、黒褐色をした結晶性のポリマー樹脂です。

ガラス繊維や炭素繊維を混合させるフィラー加工を行えるのが特徴で、強化樹脂として広く使われています。

フッ素樹脂に次いで耐薬品性が高く、寸法安定性、機械的強度や難燃性など他の特性が良いのも特徴で、食品安全性が高いため、水道用の部材としても広く用いられています。

脆さが欠点として知られていましたが、架橋構造により改善しています。

まとめ

今回は、エンプラ(エンジニアリングプラスチック)の主な種類と、それぞれの特徴について解説しました。

エンプラは、耐熱性や機械的強度に優れたプラスチックの総称で、耐熱温度によって汎用エンプラ、特殊エンプラに分類されます。

同じエンプラであっても機械的強度や難燃性、耐摩耗性、耐薬品性などの性能やコストは大きく変わるので、用途に合わせた素材を選ぶようにしてください。

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