設計者がCAE解析を使いこなすのは難しい?

投稿日:2022年07月26日

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3DCAD(CATIA V5やFusion 360など)を使用する設計者の方なら、一度はCAE解析に興味を持つと思われます。

しかしながら、CAE解析は難しいと敬遠してしまい、従来の設計を続けているのが現状ではないでしょうか?

例え使えるようになっても、CAE解析をどのように設計に活かすのか分からない方も多いはずです。

今回は設計者がCAE解析を使いこなすためのヒントをご紹介します。

難しいと思われがちなCAE

機械工学を専攻されていた方なら、『材料力学』や『有限要素法』を学んだ機会があるかと思われます。

材料力学については、引っ張り試験などに代表されるように、物体に現われる「応力」や「ひずみ」の様子を調べる学問です。

しかしながら、材料力学は軸、はり、板といった基本的な構成要素の計算を対象としており、より複雑な形状を調べるには一歩進んだ解析手法が必要となります。

そこで登場するのがCAE解析と深く関わる有限要素法です。

ただCAE解析を理解するため、有限要素法の専門書を購入した方もいるかもしれませんが、読んで分かる通り難解な学問です。

CAE解析を学ぶ上で最初に躓くのはこの辺りですが、果たして有限要素法を深く理解する必要はあるのでしょうか?

まずCAE解析は以下の三つが重要になります。

  • 材料特性(ヤング率、ポアソン比、密度など)
  • 境界条件(荷重や拘束条件など)
  • メッシュの作成

これらの理解が確かであれば、専門家に頼まなくても一人で解析を行うことが可能です。

材料特性や境界条件は設計者でも分かりますし、メッシュの作成も現在はソフトウェアが自動でやってくれるため、それほど難しくはありません。

反対に材料特性や境界条件が曖昧だったり、メッシュの精度が悪ければ正しい結果を得ることができないため、計算を実行する前に経験者に必ずチェックしてもらいましょう。

使いこなすには専門的な学習が必要?

CAE解析は有限要素法だけでなく、製品開発の分野によっては熱力学や流体力学といった様々な専門知識が関わります。

しかしながら、力学全般の知識が必須であるかと言うと、決してそうではないのです。

また、より深く解析を行うために、玄人向けのCAE専門ソフトウェア(アメリカのANSYS社製など)の操作も覚える必要があるのでは?と、不安になる方もいるかもしれません。

製品の開発に必要な知識を学ぶのは当たり前のことですが、働きながら多くを学ぼうとするには限界があります。

大手メーカでも、構造解析と熱解析を行うCAE技術者は担当が分かれており、作業効率を重視する姿勢が伺えます。

これは、ジャンル別のCAE専門ソフトウェアの操作法を習得するため、相応のコストや時間を費やすからです。

つまり、技術習得する内容を取捨選択することも、CAE解析を行う設計者にとって大切な仕事になります。

※CAE技術者は解析する内容により、様々なCADやCAEソフトを駆使する機会がありますが、設計者がそこまで覚える必要はありません。高度な解析だと分かれば専門家に任せましょう。

近年において、3DCADに含まれるCAEソフトは非常に扱いやすい仕様になっており、解析の初歩としては最適です。

CAE解析で大切なのはトライ&エラーの繰り返しなので、まずは計算を実行できるまで使ってみましょう。

その後で、自分にとって学ぶべき内容を少しずつ広げて行くと良いかと思います。

CAE解析を有効に活用するには

CAE解析を行う前に確認する事項を以下に記載します。

【CAE解析を使用する目的は何か?】

CAEでは応力解析、振動解析、熱伝導解析といった様々なジャンルがあります。自分がどの解析を行うのかチェックしましょう。

【どのような問題を解決したいのか?】

荷重による部品の破損、振動による騒音の影響、高熱による部品の変形といった問題をCAE解析でシミュレートすることができます。どの問題を解決したいのかピックアップしておきましょう。

【解析対象となる部品の確認】

CAE解析では、部品点数が多くなるほど計算時間が長くなります。問題が起きる可能性のある部品と、その周囲に組み付けられている部品を確認し、拘束条件で省略できるか把握しておきましょう。

例として上記の画像のように部品点数が多い場合、ピストン部分だけ熱解析を試みるのであれば、カムシャフトのメッシュモデルを作成する必要はありません。

【設計した3Dモデルがメッシュを切れるか試してみる】

複雑な形状によってはスムーズにメッシュを切れない可能性があります。練習の意味も含め、自分でメッシュモデルを作成してみましょう。またメッシュの大きさも3Dモデルに合わせる必要があり、細かくなればなるほど計算時間が長くなります。

【材料特性の確認】

3Dモデルに設定する材料特性を確認しましょう。応力解析ならヤング率、ポアソン比、密度が重要な入力内容になります。

【境界条件の確認】

境界条件とは主に荷重条件と拘束条件があり、物体に加わる荷重と支持している場所を3Dモデルに指定します。解析結果に大きく影響する設定項目なので、モデリングの際にしっかり確認しておきましょう。

【CAEソフトの操作を覚える】

3DCADに含まれるCAEソフトは、簡単な解析であれば一日で操作を覚えることが可能です。まずは馴染みのある応力解析からスタートしましょう。自分の設計した3Dモデルで解析するのも良いですが、シンプルな棒や板などのモデルから始めても構いません。

上記のチェック項目はあくまで初心者へ向けたものですが、理解が深まると境界条件などを詳細に設定できるようになり、より実測値に近い解析結果を得ることができます。

一方で、あまり数値に拘らず応力集中が起きている箇所の確認だけでも設計に寄与しますので、使い方はあなたの自由です。

難しく考えずにどんどん活用してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回の記事はあくまで「最初の一歩」に触れた内容でしたが、CAE解析に対する取っ付き難い印象は少しだけ払拭できたかと思います。

先にも述べた通り、CAE解析はビジュアルで問題の起きる箇所を特定できるため、使いこなせば心強いツールになるはずです。

「使ってみたけどやっぱり難しい」という方は、ベテランのCAE技術者に活用法を聞いてみるのも良いでしょう。

多くのCAE技術者は、詳細な設定を初心者に対して分かりやすく説明してくれると思います。

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