設計の現場に3DCADがあれば2DCADは不要になるのか?

投稿日:2022年01月18日

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近年では、機械設計で3DCADを活用する企業が増えており、時代の流れから2DCADが不要になったと思う方がいるかもしれません。

確かに3DCADでは2次元の図面を描ける機能があり、3Dモデルと図面が連動してくれるため、3DCADですべての作業が完結できると思われがちです。

では、本当に3DCADだけで大丈夫なのでしょうか?

今回のコラムは、3DCADと2DCADの違いをご説明し、それぞれの長所と短所を簡単に比較したいと思います。

目覚ましい進歩の3DCADの技術

3DCADの最も優れた点は、実物を立体的に画面上に描けるという本質的な機能です。

そのため、ソフトウェアを使いこなす技術が必要となり、習得するまで最低でも1~2ヶ月間は掛かる可能性があります。

対照的に、2DCADは画面上に線を描く作業が中心となるため、ソフトウェアの操作もそれほど複雑ではなく、学生の期間に触れていればすぐに2次元の図面を描くことができるでしょう。

機械設計の枠組みで考えた場合、取っ掛かりとしては2DCADの方が扱いやすく、高校や大学時代に必須で学んだ人材も多いと思われるため、即戦力向きのCADと言えるかもしれません。

また、ハイエンドの3DCADはラインセンス契約が高額で有名なので、予算の観点から積極的に導入する企業が少なく、未だに2DCADを使い続けるケースもあります。

こう聞くと3DCADを学ぶメリットはないように思われますが、高額なライセンス料を払うだけの価値があるのは事実です。

まず3DCADには2次元の図面を描ける充実した機能が備わっており、3Dモデルの寸法を変えれば、図面の寸法も自動的に変わるのが特徴的です

例えば部品同士で干渉を起こす可能性があった場合、立体的に問題の箇所を確認できるため、即座に寸法修正から図面へと反映させ、効率的なモノづくりが行えます。

他にも、3DCADは曲面のモデル作成にも長けており、特にデザイン性を重視する自動車メーカーや家電メーカーは不可欠のツールなので、これらの観点から2DCADの限界が見えてきます。

また、3DCADには部品同士の組み立てモードやCAEによる有限要素法解析、NCデータへの自動変換など多彩な機能を活用できるため、最先端のモノづくりを実感することができ、CATIAやCreo Paramatoric、NXといった各ソフトウェアのモデリングスキルを身に付けておけば就職にも有利です。

2次元の図面はもう必要ないのか?

現在の2次元図面は、「指示書」としての役割が強い傾向にあります。

3Dモデルがあれば実物の形状はある程度分かるため、例えば寸法公差や表面粗さ、加工基準面などの細かい指示は、2次元図面を見る方が圧倒的に早いです

また簡単な打ち合わせの際、図面があれば話も進みやすく、3Dモデルだけでは伝わらない部分を補ってくれることがあります。

そのため、図面を読む力はエンジニアにとって必要不可欠なスキルであり、大手メーカーでも3Dモデルから2次元図面を必ず作成します。

2DCAD開発の最大手であるAutodeskも、近年ではFusion 360といった3DCADの開発に力を入れており、他社ソフトウェアで作成した3Dモデルの読み込みが可能な環境を整えています。

つまり現在のモノづくりでは、3Dモデルと2次元図面は切り離せない関係と言えるでしょう。

2DCADだけを使い続ける企業も、いずれは3DCADを扱うことを考える必要がありますし、一方でモデリングのスキルさえあれば、図面を読む能力や2DCADの操作を覚える必要がないと考えるのも間違いなのです。

効率の良い設計を目指すために

今では安価で契約できる3DCADもあり、個人でソフトウェアを所有できる時代になりました。

どちらのCADも触れて、学ぶことができる時期なので、それぞれのメリット、デメリットを知ることが大切になります。

2次元図面も描けるため万能に思える3DCADですが、「3Dモデルと図面が連動する」機能が弊害になる時があります。

機械設計の図面は細かいルールがあるため、例えば外形線は太い実線で描いて残し、必要のない細線などは削除する必要があります。

しかしながら3Dモデル側で寸法を修正した場合、消したはずの細線が復活していたり、指示した寸法線や中心線が僅かにズレていたりすることが多々あります。

また、断面の図は3Dモデルとの連動を切っておかないと、3Dモデルの形状が変わったことで斜線がはみ出したり、寸法の矢印が別の箇所を指していたりします。

場合によっては2DCADで描いた方が早いと感じる時さえあるのです。

3DCADはあくまでモデリングに特化したCADなので、2DCADとの違いに慣れておく必要があります。

他にも、3DCADは開発するソフトウェア会社によって仕様も大きく変わり、例えばCATIAと Creo Paramatoricでは、モデル構築まで至る操作がそれぞれ違います。

【マウス操作の比較(3ボタンマウス推奨)】

・CATIA
平行移動:中ボタンをクリック後、押したままドラッグ
回転:中ボタンと左ボタンをクリック後、押したままドラッグ
拡大・縮小:中ボタンを押したまま左ボタンをクリック後、中ボタンのみ押したまま上下にドラッグ

・Creo Paramatoric
平行移動(パン):Shift+中ボタンを押してドラッグ
回転:中ボタンをクリック後、押したままドラッグ
拡大・縮小:Ctrl+中ボタンを押して上下にドラッグ

「線を描く」というシンプルな2DCADに対し、3DCADはより複雑で覚えることも格段に多くなるため、振り回されないよう地道な学習が必要となるツールなのです。

そして学びと経験を積むと、「この3Dモデルは図面と連動した方が良さそうだ」、「簡単な部品なので2DCADで描いてみよう」などの判断ができるようになり、工数の大幅な削減に繋がります。

まとめ

これから機械設計の技術者を目指す方は、CADというツールに頼る機会が多くなるでしょう。

職場の環境により、3DCADのみ使い続けるところもあれば、2D・3DCADを併用して使うところもあり、モノづくりのやり方は千差万別です。

CADは操作法をしっかり覚えれば必ず結果に繋がるツールなので、咄嗟のトラブルにも柔軟に対応できるよう、常に学習する姿勢を崩さず、全てのソフトウェアを使いこなすくらいの意気込みで仕事に取り組みましょう。