強度設計マスターに向けての第一関門、「モデル化」とは?

投稿日:2021年12月5日

こんにちは、MONO塾講師の赤尾です。
先日は「強度設計に必要な知識の全体像」というお話を致しました。

何事もそうですが、
全体像を理解することは大切です。

設計も全体設計と詳細設計を繰り返すことで
形を作っていきます。

逆に、全体が見えていない状態で進んでいくと、
詳細な部分でつまずいてしまいます。

ですので、強度設計の学習も
しっかりと全体を理解してから、深い部分に入って行けると良いでしょう。

学習教材として、
MONOWEBの記事サイトや無料テキストがありますので、ぜひ活用してください。

また、体系的に基礎知識をしっかりと
身に付けたい方は「Eラーニング」も検討してみるのも良いでしょう。

それでは本日は、強度設計マスターに向けての第一関門である
モデル化」についてのお話です。

初心者の方には、基礎知識を習得した後のお話になりますが、

基礎を学ぶ上でも参考になる部分も多いと思いますのでぜひ、このまま読み進めてみてください。

CAD設計で「モデル化」という言葉が表す意味は、
モノの構造を、立体的に3次元で表すことを意味します。

ですが、
強度設計でのモデル化」は、
複雑な構造を2次元のカンタン(単純)な構造に表すこと、です。

すでに超入門のセミナーを受講された方は思い出してください。

セミナーでは、
「ブラケット」「フック」「アイボルト」
をモデル化しましたね。

これらは、比較的かんたんな形状ですので、
モデル化までのイメージがしやすかったのではないでしょうか。

ですが、実際の設計で扱う製品形状やその図面は、
その機能を実現するためにもっと「複雑」になることが多いです。

例えば、一様な断面の部品でなく、部品の各断面形状が変化して「複雑」に
なっている部品があります。

断面によっては、ボルトが取り付く穴が空いていたり、
ボス」と呼ばれる隆起した形状がついていたり、
近隣部品に干渉しない様に切り欠きや、一部がカットされる場合もあります。

このように強度計算において、形状が複雑になっているものを
手計算できる形状にすることを「モデル化」といい、
いかに「単純化」するかがキーポイントになります。

したがって、前回お話させて頂いた各種応力の計算方法や梁の公式を学習したのち、
次に身につけるスキルが『モデル化』になります。

モデル化さえすることができれば、
どんなに複雑な形状であっても
強度計算の解を導きやすくなります。

一般の材料力学の書籍では、
このいかに複雑な装置を「モデル化」するかの具体的なやり方があまり書かれていません。

新人設計者が
「大学で学んだ材料力学の知識が、実務で応用できる力となっていない」
原因の一つに、このことがあると感じています。

ちなみにですが、
MONO塾では「中級者レベル」を目指す方向けに
強度計算書作成セミナー、という講座があります。

こちらの講座では、ジブクレーンという
重たい荷物を運ぶ機械装置を題材にして、モデル化の方法を学習します。

断面形状は、
丸や四角のような単純形状ではなく
複数の図形が組み合わさった「複雑」な形状です。

また、複雑な形状にプラスして
リブやボルトの穴、ストッパーなど様々な形状がついています。

さらに、複数の部品がボルトや溶接でつなぎ合わさっています。

どうでしょう。

このように聞くと、
考えることが多すぎてムリだ、と思うかもしれないですね。

でも大丈夫です。

このような複雑な対象物でさえも、
モデル化することで、材料力学の基本公式だけで
計算することができるのです。

このように、
複雑な設計対象物を、かんたんにするためには、
「モデル化」するスキルが必要になります。

では具体的に見ていきましょう。

図1.ジブクレーン

まず、こちらのジブクレーンのモデル化では、
力を支えている構造物を
「単純な梁(はり)」に置き換えていきます。

そして、複雑な形状については
ないもの
として考えます。

例えば、構造物に補強板がついている場合、
一旦ないものとすることで、強度的には厳し目の
評価となるように考えるわけです。

すると図1のように単純化できますよね。

計算可能な単純なモデルに変換することができるわけです。

不思議に思うかもしれませんが、
このように補強がない状態で、強度が十分に満足できていれば
「強度的に問題なし」となります。

しかし、ここで気をつけなければいけないことがあります。

それは、
厳し目に計算し余裕を持たせるということは、
重量的には「重くなる」ということです。

ですので、軽量化をする必要がある場合は、
補強板をしっかり計算に加味して、強度の評価をする必要があります。

このように、
モデル化の手法には、いくつかの手順があります。

最初は難しく感じるかもしれませんが、
いくつかのパターンを経験することで、
単純化のコツもわかり、容易になっていきます。

MONO塾の中級者レベルを目指す講座である
強度計算書作成セミナー』では、
基礎をある程度習得した人が、
次にステップに上がるために必要な
「モデル化のコツ」を学ぶことができます。

ぜひ「基礎知識については、ある程度理解できた」
という方は、次のステップとしてこちらの講座を
検討してみてください。

それでは、次回は、
「力の流れを理解する」について執筆致しますので
楽しみにしておいてください。

 

- このコラムを書いた専門家 -

赤尾 信広

S45年4月16日生 機械工学専攻修了
中型旅客機、国産ヘリコプタ構造解析
スペースジェット(MRJ)主翼・前縁・SLAT構造解析
専用機開発設計等などを経験
現在、もの塾講師 機械設計技術アドバイザー