設計のデータ共有ができていないと技術が衰える理由

投稿日:2022年05月25日

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あなたは一度設計したデータを、どのように管理していますか?

設計図書を印刷物ではなく、データで保管する様にしている職場は、近年非常に多くなっています。

特に新型コロナによるリモートワーク化による電子ファイル化が推進されて、あらゆる図書が電子データに置き換わってきていますね。その多くの企業で働く皆さんは、設計図書の保管を社内ネットワークサーバーに入れて保管しているのではないでしょうか。

ここで質問です。

そこで働くあなたは、設計図書の電子データを個人持ちしたりしてませんか?

ここで言う「個人持ち」とは、決して自身が所有するパソコンに保存していることだけを指していませんネットワークサーバーに自分専用のフォルダを作ってその中に業務データを入れていてもそれは「個人持ち」です。

え!設計図書を個人持ちしちゃいけないの?と思う人もいるかもしれませんが、それは強くおススメ出来ません。もし、あなたが今の所属から違う部署に配置移動となった場合、現在進行中の設計を誰かに引き継がなければいけません。

その時にその資料のすべてが個人持ちとなっている場合、引き継がれた方は、どこに何のファイルがあるのか分からないという状態になります。ファイルを探す時間をかけなければ閲覧できないデータでは、どんなに有用な情報であっても誰にも活用されないことを知っておいてください。

世代交代後で分かった過去の経験を引き継げていない実態

高度経済成長期の日本では、様々なモノが作られ、常に新たな設計が生まれ、その最終製品や設備が稼働となることで、モノづくりの経験を養うことが出来てきました。

そして現在では、その時に活躍していた世代の皆さんが、世代交代を終えています。

あなたの部署に、当時の技術や失敗の経験は、その部署のどこに残っていますか?と聞かれたらほとんどの場合は、先輩からの言い伝えである場合が多く、その書類はどこにあるか分からないと答える人が多くないですか?

組織全体での過去の知識や経験をないがしろにして、設計者個人の経験のみで、1から人材を育てる仕組みでは、いつまでたっても過去のなぞり書きの様な状態(過去の失敗を繰り返す状態)になってしまい、全く進歩のない組織になってしまいます。

その様な組織で起きることを以下に挙げてみます。

➀何か失敗しないと「以前同じような失敗があったこと」が分からない

過去の失敗事例の記録を知っている人が少人数に限られており、失敗してはじめて、過去に同じ様な事例があることを知っている人から「昔も同じ失敗があったよ」と連絡されてしまった、という経験はないでしょうか。

失敗事例等の記録を各個人任せになってしまい、「誰が」「どこで」「どのようにして」管理するかを決めずに放置している為に、このようなことが起きてしまいます。

➁設計担当者が不在の時に、不意の問い合わせに全く答えられない 

設計担当者が出張や休日の時に、その担当者が作成した設計資料の問い合わせがあっても、資料のデータがどこに保管されているか分からない場合は、当然答えられません。

この状態が当たり前と思っている組織とそんなことありえないと思う組織では、その組織全体の成果も大きく変わっているはずです。

どこに何のデータがあるかを決めておくだけで、何かあったときに、迅速に組織内の誰もが、フォローし合えるような組織になるのです。

③マニュアルを見ないで仕事をする為、仕事の進め方が人によってバラバラになる

せっかく先人の人が残したマニュアルがあるにも関わらず、それを見ようとしない組織になってしまいます。

その為、事務手続きなどの毎回同じ事の繰り返しになるような作業でも、人によってバラバラになってしまい、他場所との連携が取りづらくなってしまいます。

あなたの部署がもしこれらに該当していた場合、なるべく早いうちに改善を進めたほうが良いですよ。

そのデータどこに保存しているの?は技術が失われる兆候

よく職場で「あのデータどこに保存しているか知ってる?」という会話があるかと思います。

その会話の裏には、そのデータ保存先がわかる人が誰もいない場合、せっかく残したデータは、誰からも活用されないデータとして存在価値がなくなるかもしれないというリスクが含まれています。

なぜなら、電子データは「保存している場所が分かりづらいから」という理由だけで、どんなに優れたデータであっても抹消されてしまうのです

これは思っている以上に、すごく恐ろしいことなのです。

一昔前は紙でデータを残す為、その書類を紛失しない限りは、その記録は残っていました。しかし、今はほとんどの場合、電子データでしか記録は残りませんので誰にも見つからない場所に残ってしまったデータは途端に紛失したもの同然なのです。

この意識がないと我々の技術力の進歩は途絶えてしまいます。職場でもしこの会話が頻繁に起きる場合は、黄色信号と思っていいですよ。

ここまでは少々批判的な内容でしたが、これからその改善方法について述べていきます。

データ保管場所をルール化

これらの解決法を先に伝えます。どんなマニュアルよりも最上位にデータの保管法についてを徹底的にメンバーに周知し実行させてください。

方法は様々あると思いますが、著者の私が実施した例をいくつか紹介します。

改善例1:業務にかかわるデータの個人保管は禁止

設計業務に関わるすべてのデータをあらかじめ決めておいたフォルダーに必ず保管するようにルール付けを行います。

改善例2:業務で使用するすべてのファイルを保管するためのフォルダーの設計と規則の決定

カテゴリごとにフォルダーを作り、そのフォルダーの階層も分かりやすくなるように設計します。ファイルを探す人の目線でカテゴリを分けて、データを簡単に探せる様に、設計してください。

改善例3:どこに何のデータが入っているのか、すぐに分かるようにフォルダーの階層マップを作成

たとえば他部署の人がとある機器の機器図がほしいと思ったときに、その階層マップをみながら自分たちでそのデータにアクセス出来るようにしておくとよいと思います。

改善例4:改善例1~3のルールを明文化

組織内でルール化し、そのルールをあなたの後世の人に残しておく必要があるため、データ運用マニュアルとして規定し、引き継いでいきましょう。

どうでしょうか?

あなたの組織内にすでに独自のデータ運用法のマニュアルがあればそのマニュアルの見直しで済みます。しかし、もしそういったマニュアルが無ければ、他の社員からおそらく反発があるかもしれません。

そういった反発も、一度規定し運用してしまえば、これまでのデータを探す手間が解決できるので、すぐに納得し反発はなくなるはずです。

まとめ

これまでは、設計資料等のデータの作成者(発信者)が受け取り側の「その資料をください」というリクエストに応じて、個別にデータを送っていたかと思います。

しかし、部署内でこの記事の「データ共有化」が進めば、あらゆるデータは、受け取り側が「このデータはここに保管されているはずだ!」と能動的にデータ取得できるため、発信者の負担はなくなります

この自律した状態でデータのやり取りを行うことであなたの部署はより効率化できるのではないでしょうか?