機器設置する際の地盤調査やN値とは?

投稿日:2023年12月06日

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屋外に機器を設置する際に、事前の基礎工事が必要になったことはありますか?

例えば、「屋外に複数の空調設備を設置したい」といった、屋外に複数装置を設置したり、「空き地に20tの水のタンクを設置したい」といった重量機器を屋外に設置する場合など、機器設置に伴う基礎工事は、新規設備を設置する際には、たびたび発生するかと思います。

地面に機器を設置する際や建屋を建設する際は、必ず基礎工事と呼ばれる地盤面に鉄筋コンクリートで作る土台を作る工事が発生します。基礎工事といっても、地盤面の上に載せる荷重や状態によってさまざまな基礎があります。

例えば、一般住宅などは、地盤面が安定した場所であることが多く、「べた基礎」や「布基礎」と呼ばれる基礎が採用されます。

べた基礎や布基礎は、その基礎と地面の接する面積全体で荷重を受けることで支えるように設計します。

べた基礎と布基礎の形状

基礎工事施工後の様子

その他に、杭基礎と呼ばれる杭(パイルと呼ばれます)を用いて地中の固い地層面に固定する方法もあります。

杭基礎の形状

引用元:日本コンクリート工業HP

これらの基礎形状は主に、土木建築の設計者によって形状を決定し、強度等の確認をおこなってから施工するのが一般的です。

ここで、機械屋さんや電気屋さんがよく悩んでしまうのが、基礎設計はどうするのか?という問題です。

土木建築の設計事務所等に設計をお願いするか、自分で計算するか、または、その装置したい機器のメーカに基礎設計をお願いするか、どうすべきか迷うかと思います。

周りに土木建築に詳しい人がいればいいのですが、いない場合は施工会社に基礎設計込みで、基礎工事を含めて依頼することになり、工事費が高くなってしまうからです。

しかし、「建築物でないのだから、そんな検討や設計はいらないはず!」と判断してしまうのは、注意が必要です。

建築基準法で、「工作物」として定められているものについては、建築確認申請が必要となり、その固定方法や荷重に耐えられる固定がされているかを証明する設計図書を提出する必要があります。

その例としては、以下のものが挙げられます。(建築基準法第88条及び、建築基準法施工令138条にて記載)

  • 高さ6メートル超の煙突
  • 高さ15メートル超の鉄柱、木柱等
  • 高さ4メートル超の広告塔、記念塔等
  • 高さ8メートル超の高架水槽・物見塔等
  • 高さ2メートル超の擁壁

これらに該当する場合は、専門の設計事務所に相談するか、自治体の方針に従い設計を行うことになりますので、注意して下さい。

基礎設計を依頼する前に知っておきたいこと

基礎設計を土木建築の設計事務所に依頼すると「地質調査はお済ですか?」「地耐力はいくつで設計しますか?」など問い合わせを受けることもあり、不慣れな方は「ん?地盤調査?」、「地耐力って何?」と困ってしまう場合もあります。

その為、基礎設計ではどんな調査を実施し、どのような値が必要になるのかについて知っておいた方がよいです。

基礎設計に必要な地質調査とは?

重量のある機器を屋外に設置するために、新たに基礎を施工する場合、その地盤面について、しっかりと事前調査が必要です。

もし、調査せずに基礎工事を行ってしまうと、地盤が想定している重量に耐えられず、基礎が沈下してしまう現象が発生するリスクがあります。

地盤沈下は数年の長期にわたって発生してしまう現象である反面、一度発生した地盤沈下を止めて復旧することは、非常に難しくなります。そのため、きちんと地質調査に基づいて基礎設計行う必要があります。

では、地質調査は一般的に、どんなことを行うのでしょうか?

その調査は大きく分けると、「載荷試験」「ボーリング調査」の2つがあります。

載荷試験とは

杭を用いずにべた基礎や布基礎を地面の上に設置する際に、その地表面がどの程度の荷重に耐えれる地表面になっているか(地耐力や支持力と呼ばれます)を調べるのが、載荷試験です。

その方法は非常にシンプルです。

対象地盤に規定された円盤板を置き、その円盤に上から荷重をかることで、円盤が沈下する値を読み取ることで、地盤評価を行います。

載荷試験の様子(地面に置いた平板にジャッキで荷重をかけている)

引用元:株式会社FACEブログ

一般住宅だけでなく、道路や滑走路の設計、石油貯槽タンクなど大型機器の基礎の支持力管理を行う際には、載荷試験が用いられています。

ただし、巨大地震が発生した際の液状化現象が発生した際に、どの程度地表面が軟弱化するかについては、この載荷試験では判断ができません。

そのため、地震に対する地盤面の安定性を担保するには、基礎構造をべた基礎や布基礎ではなく、杭基礎にする必要があります。

杭基礎の杭を挿入する様子(重機:パイルドライバーによる挿入)

杭基礎は、どれくらいの深さに杭を差し込んでおかなければいけないかを事前に調査する必要があります。その調査を「ボーリング調査」といいます。

ボーリング調査とは?

ボーリング調査とは、地盤に円筒形状の穴をあけ、中の土のサンプル採取し、標準貫入試験と呼ばれる試験を1mおきに実施することで、地盤の固さ、支持層の深さ、地層構成、地下水位が分かる調査方法です。

標準貫入試験の模式図

引用元:セキスイハイム東海HP

このボーリング調査によって、杭をどれくらい深い位置に固定すべきかが判断できるようになります。

また、標準貫入試験とは、質量63.5kgのドライブハンマを76㎝自由落下させることで、ボーリングロッド先端に取り付けた標準貫入試験用サンプラーを地盤に30㎝打ちこむのに要する打撃回数(N値)を求める試験です。

この「N値」は、地盤の性質を工学的な値として用いることができ、N値が大きいほど強度のある地盤と評価されます。

例えば、ある深さの地盤の地耐力とその深さのN値の関係は、おおむね以下の式で推算することができる為、地表面の耐久力を簡単につかむことができるのです。

式:地耐力(kN/㎡)=N値×10

例えばN値10の地盤では、10×10=100kN/㎡となります。

標準貫入試験は、「N値」求めることができる試験として日本産業規格JIS A 1219で規定されており、掘削深さに応じた土質と強度を判断するにはこのN値の取得が必要となることを知っておきましょう。

まとめ

土木建築専攻の方でなければ、鉄筋コンクリートの基礎設計についての話は、なじみの無い内容であったかもしれません。

しかし、屋外の機器設置工事では多くの場合、基礎工事を伴うことが多く、たとえ機械専攻者であっても、その基礎工事がどのような調査をもとに基礎設計を行っているのかを知っておくと便利です。

また、N値を用いることで「この地盤面には○○tまでの重量機器を設置することができるな!」と地耐力を把握し、適切な場所に機器設置ができるようにしておくことも大切です。